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* 心理学の元祖カタ・ウパニシャッド

 精神分析で有名なオーストリア人の精神科医S.フロイトは今から100年ほど前の人です。このフロイトが人の無意識について明らかにしたといわれていま すが、ウパニシャッド聖典の中にも、こうした人間心理に詳しくメスを入れて分析しているカタ・ウパニシャッドという名前の聖典がありますので、最後にその 内容の一部を紹介しましょう。
 このウパニシャッドに付けられた「カタ」という名前の意味は分かりませんが、こういう名前のグループの人々がいたのだろうということで、「カタ派の奥義 書」と訳されています。このグループの行者さんたちは心理分析に長けていたようで、人間の身体を十頭立ての馬車に見立てて次のように書いています。

「真の自分とは、馬車の中に座っている主人である。人間の身体とは車両である。馬車の御者とは理智(外からの情報を判断する心理器官)である。車両と馬た ちとをつなぐ手綱が意思(外からの情報を理智に伝える心理器官)である。(眼や耳や皮膚や手足や生殖器など10種類の)感覚器官が馬たちである。これら感 覚器官が追い求めるのが、馬が走る道というものである」  
(カタ・ウパニシャッド第3章3,4節)

 このように、人間の肉体とその中で働いている心理的な器官を分類して数え上げているのです。今から3000年近い前にこんな事を考えていた人たちがいた なんて、おもしろいでしょう? 今でも毎日、お金を稼ぐことだけを考えてあくせく生きている人たちが多いのに、さすがにインドのヨーガ行者さんたちは、考 えていることが違うわけです。

 私もはじめてインドに行って私のインド人のヨーガのお師匠さんにお会いした時も、上に書いたこの心理器官の話は耳たこになる ほど聞かされたものです。ですからこの教えは極めて古い教えなのですが、今でも生きている教えなのです。何故かと言いますと、このように心理分析をした後 で、このカタ派のヨーガ行者さんたちは、次のように人生を生きれば「上手に生きられるよ」と教えているからです。

「もしも、その人間の(感覚器官である馬たちにつながる)手綱である意思が落ち着いた働きをせずに、御者である理智が正しい判断力によってこの手綱をコン トロールしていないと、その人間の感覚器官である馬(眼、耳、舌、手足、生殖器など)たちは暴れ馬のように暴走しはじめる」
(カタ・ウパニシャッド第3章5節)

と、このように教えています。

 ですから、いつも心を落ち着けて良い判断ができるような心を持ち続ける努力が大切なのですよ、と教えているのです。人生で大切なのは、良い収入を得るた めの多くの技能を身につけることだけでなくて、もっと大切なのは何時も心を静かに落ち着かせ、きれいにさせ、暴走させないようにさせていることなのだよ、 という教えです。こういう心を持っていれば、心身症や神経症にかかることもないでしょうし、周りの人たちとも良い人間関係を築けるでしょう。では実際には そうした心を養うにはどうすればよいのでしょうか?

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